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Android Cubasis 3 とコンデンサーマイクを使ってボーカル録音しよう
自宅のPCにCubase が入っているけれど自宅でのボーカル録音に何らかの制約があり、カラオケボックス等でボーカル録音ができたらと思っている方はいませんか。
この記事では 2020年6月にAndroid スマホ向けにリリースされた Cubase 3 を使いカラオケボックス等でコンデンサーマイクを使ってボーカル録音し、それを Windows PC内の Cubase 13 へインポートする方法を紹介します。
ネット上では iPhone/iPad 版 Cubasis 3 に関連した記事は多数ありますが、Android 版 Cubasis 3 に向けた情報は少ないように思いますので、そういった悩みをお持ちの方向けにこの記事を作成しました。 |
使用アプリ/機材
使用している Android スマホは以下のとおりです。
- Galaxy Tab S5e(SMT-T720, Android11)
- Galaxy Note20 Ultra 5G(SC-53A, Android12)
カラオケボックス等でボーカル録音するために次のアプリ、機材を新たに準備しました。
ボーカル録音自体はAndroid スマホ内の内蔵マイクでもできますが、試したところ少し音がこもっているように感じたのでより高音質での録音を行うため、コンデンサーマイクでのボーカル録音に挑戦してみました。
また Androidの Cubase 3 はGoogle Play のリンクからダウンロード&インストール、Windows PC内のCubase はCubase Pro 12 を使用しています。
- Cubasis 3
- Cubase Pro 12
- オーディオテクニカ コンデンサーマイクロホン AT2020
- オーディオテクニカ キャノンケーブル ATL458A/3.0
- DOIBETTER 卓上マイクスタンド&ショックマウント&ポップガード デスクトップマイクスタンドセット
- TASCAM マイク ギターインターフェース iXZ
- LAMSCAT Type C イヤホンジャック変換アダプタ
- ソニー イヤホン 重低音モデル MDR-XB55
この TASCOM 製 マイクギターインターフェースiXZは iPhone/iPad 用に市販されているものでコンデンサーマイクにファントム電源を供給してiPhone/iPad のイヤホンジャックで接続することができます。
ただ自分のAndroid スマホは外部マイクを接続可能なUSB端子がType-Cなので変換アダプタを使ってiXZのイヤホンジャックからUSB Type-C へ変換し接続しています。
【2022/10/10 追記】 このTASCOM 製 マイクギターインターフェースiXZは音量は小さいですが音声出力端子から音声入力端子(マイク入力)へのアナログ信号の回り込みがあり、 Cubasis からの音声信号をモニタしながらマイク入力の録音を行う場合、マイク入力にCubasisからの小さい音が乗りマイク入力のみの完全な録音はできないようです。従ってマイク入力のみの完全な録音をしたい場合はCubasisからの音声出力をミュートし、別デバイスでカラオケ部分を聞きながら、マイク入力録音するといった方法をとる必要があります。 |
コンデンサマイクとAndroid スマホを接続する
コンデンサマイクとAndroid スマホの接続方法についてはサウンドテックラボ さんの良い記事
があるので必要に応じてこちらを確認ください。
Cubasis 3 を使ってボーカル録音する
Cubase 3 を起動する
コンデンサマイクとAndroid スマホの接続が終わったらAndroid スマホ内で Cubasis 3のアイコンをクリックしてCubasis 3を立ち上げます。
新規プロジェクトの作成
cubasis 3 を起動したらまず
MEDIA > Projects > NEW PROJECT
を順にクリックし
出てきたダイアログボックスにプロジェクト名を入れて新規プロジェクトを作成します(ここでは20220716_vocalというプロジェクト名にします)。
そして新規作成したプロジェクトを
MEDIA > Projects
をクリック後
20220716_vocal
をダブルクリックして開きます。
新規 Audio トラックの作成
次に
+ADD > AUDIO
を順番にクリックすると
以下のTrack 1のような Audio トラックが作成できます。
外部マイクの接続設定とゲイン調整
コンデンサーマイクを TASCOM 製 マイクギターインターフェースiXZ経由でUSB Type-C端子に 接続した場合
Cubasis 3 内の
SETUP
をクリックした次のダイアログで
- Output Device : Built-in Sperker 1
- Input Device : Built-in Microphone 1
を
- Output Device : USB 1
- Input Device : USB 1
のように変更する必要があります。
この設定をしないとCubasis 3 にUSB経由でコンデンサーマイクの入力が入って来ないので注意が必要です。 |
また
- Input Gain
のスライダーを左右に動かしてマイクの入力ゲインを調整します。
そして設定し終わったらこのダイアログの右上の角にある✖をクリックしてこのダイアログを閉じます。
トランスポートパネル
Cubasis を起動したとき画面の上部中央にあるエリアはトランスポートパネルです。
このトランスポートパネルの中央にある6種類のボタンは基本的な再生と録音等の制御を行うものです。
Audio トラックでの録音
この状態で録音ボタンをクリックすると録音が始まり、トラック内に赤い〇がくるくる回って移動します。
そして録音が終わったら同様に画面上部の録音ボタンをクリックすると録音が終わります。
このトラック内に右向きのスピーカボタンがありますが、 TASCOM 製 マイクギターインターフェースiXZにヘッドホンが接続されている場合にはこのボタンを押すことで現在録音中のトラックの音をモニターすることができます。
このスピーカボタンもON/OFFのトグルスイッチになっておりマイク入力をオーディオソースにしたいときはON、すでに録音済みのトラックの録音データをオーディオソースにしたいときはOFFにします。
このスピーカボタンは録音時のみでなくマイク入力の有無確認、ゲイン調整のときにもONにします。このスピーカボタンをONにすることで録音トラックに Insert Effects やSend Effects の設定がある場合にはマイク入力にそのエフェクトのかかった音がモニタ出来ます。
一方トラックに録音されるのはエフェクトのかかっていないマイク入力そのもので、トラックの録音後にスピーカボタンをOFFにしたうえで必要に応じてエフェクタのON/OFFができるようになっています。 |
複数の曲に対して録音を行う場合
- 1つのAudioトラック内で録音ボタンを連続してタップすることで複数曲を録音する
- 1曲毎にAudioトラックを作成し録音する
という2種類の方法がありますが後でこれらのプロジェクトをPC側のCubaseにインポートすることを考慮した場合後者の方法をお勧めします。
Cubasis 3 プロジェクトを共有する
このように作成したプロジェクトの中で必要なだけAudioトラックの録音が終了したらこのプロジェクトをPCのCubase 12へインポートするための準備をしましょう。
プロジェクトを
MEDIA > Projects
をクリック後
20220716_vocal
をクリックして選択後に
SHARE
ボタンをタップします。
するとこのプロジェクトフォルダ内に含まれる全ての音声ファイル *.wav 、cubasisのプロジェクトフアイル *.cbpファイルをZIPファイルとして圧縮開始します。
圧縮が終了すると以下のように共有のオプションを選ぶ画面になりますので、例えばここで
ファイルマネージャ
を選んでこの圧縮ファイルをPCから参照可能な場所に保存します。
PCのCubase 12でCubasis 3プロジェクトをインポートする
PCでCubasis 3プロジェクト圧縮 zip ファイルを解凍する
こうして共有された Cubasis 3プロジェクト圧縮 *.zip ファイルをCubase 12のインストールされたPCのローカル環境へコピーし、この zip ファイルを解凍しておきます。
この解凍ファイルをネットワークドライブ、クラウドドライブ等に保存するとCubase 12でのCubasis 3プロジェクトの取り込の際の遅延等によりうまくプロジェクトが取り込めない場合があるので、圧縮ファイルは必ずCubase 12 が実装されているPCのローカルディスク、例えばダウンロードフォルダ等に保存しましょう。 |
Cubase 12でCubasis 3プロジェクトファイルをインポートする
次にPC上のCubase 12を立ち上げ、Cubasis 3プロジェクトをインポートしたいプロジェクトを開きます。
そして
ファイル > 読み込み > Cubasis Project
を選択し
次にPCのエクスプローラ画面で Cubasis 3のプロジェクトファイル *.cbp ファイルを選択して開く(O)ボタンをクリックします。
Cubasis 3プロジェクトのインポートがうまくいくと、Cubase 12上で以下のようなダイアログが出るのでOKボタンをクリックしてインポート作業を終了します。
Cubase12でのサンプリングレートとビットレートの調整
さてこのようにして録音したボーカル音源ですが、実はもう一つ作業が必要です。
まずは次の2つの音源をお聞きください。
インポート直後の音源 |
サンプリングレートとビットレート調整後の音源 |
いかがでしょう。
歌声がいま一つなのはご容赦頂くとして、インポート直後の音源のボーカルが間延びしたような感じがしないでしょうか。
実際にこの2つの音源は同じオーディオソースを使用しているのですが前者が約14秒であるのに対し後者は10秒と間延びしています。
なぜこのようなことが起こるかを確認してみましょう。
まず cubasis3 側で
SETUP(右上の歯車ボタン) > Project
を確認すると
となっておりデフォルトで
- Sample Rate : 48000 Hz = 48 KHz
- Bit Resolution : 16
となっていますね。
一方Cubase 12側は
スタジオ > スタジオ設定
で確認すると
- HW サンプリングレート : 44.100 KHz
となっています。
さらに
メディア > プールを開く
でプロジェクト内のオーディオソースの内容を確認すると
サンプリングレートが 44.100KHz の音源の
- ビットレート : 24 bit
であることがわかり
また サンプリングレート 48.000 kHz の入力ソースの録音欄に赤黒の波形マークがあります。
これは該当音源ファイルのサンプリングレートが Cubase12 で設定されているサンプリングレートと異なるという警告情報となっています。
これらをまとめると以下のようになり、この差が先ほどの間延びの原因となっているわけです。
サンプリングレート | ビットレート | |
---|---|---|
Cubasis 3 | 48.000 KHz | 16 bit |
Cubase 12 | 44.100 KHz | 24 bit |
サンプリングレートやビットレートについてもっと理解を深めたい方は
Live On さんによる「サンプリングレート・サンプリング周波数」についての説明ページを参照ください。 |
ではどうするかというと
万が一のためにCubase12 にインポートされた元のメディア(音源ファイル)をバックアップしたうえで
先ほどのプール画面でサンプルレートを変換したいメディア(音源ファイル)を右クリックして現れるコンテキストメニューで
ファイルを変換
を選択後に現れる次のダイアログ
で変換したい
- サンプリングレート(44.100kHz)
- ビット解像度(24 bit)
- ファイルを置き換える
を選択しOKをクリックすると選択されたメディア(音源ファイル)が Cubase12のスタジオ設定に合わせてくれます。
楽曲サンプル
このようにして作成した楽曲のサンプルをご紹介します。
まとめ
この記事ではAndroid スマホ向けにリリースされた Cubase 3 を使いカラオケボックス等でコンデンサーマイクを使ってボーカル録音し、これをPC内のCubase 12ヘインポートするための
- 使用アプリ/機材
- コンデンサマイクとAndroid スマホの接続方法
- Cubasis 3 でのボーカル録音方法
- Cubasis 3 プロジェクトファイルの共有方法
- Cubase 12 で Cubasis 3プロジェクトをインポートする方法
について紹介しました。
この記事が同じ悩みをもった方に少しでもお役に立てれば幸いです。